2024年入試に最も出た物語文《駒場東邦の場合》

2024年入試で最も出題された物語文は、村上雅郁さんの『きみの話を聞かせてくれよ』でした。7つの短編からなる連作で、中でも、駒場東邦などで出題された『タルトタタンの作り方』が注目されていました。テーマは、論説文でも頻出の「ジェンダー」です

「入試で問われる『他者への理解』《市川の場合》」をご参照ください。)

 

ケーキ作りが趣味で「男の子らしくない」中1男子が、「女の子らしくない」中3女子の苦悩を知り、共通点を見出します。そして「自分らしくあろう」と決意し、夕日の下で叫びます。偏見や決めつけが人を傷つけることや、無自覚にそのようなことをしてしまう側の心理が、丁寧に描かれています

 

「他者への理解」は近年の中学入試の頻出で、わかりやすかったでしょう。選択肢問題は5択で、やや迷うところはあっても、駒場東邦レベルの受験生ならば、取りこぼしできません。漢字15問と選択肢問題を最少失点で切り抜け、記述問題でいかに完成度の高い解答を書けるかが、勝負の分かれ目になりそうです

 

駒場東邦の昨年の出題は、難民申請しているクルド人家族の物語でした。より複雑なテーマだったので、得点率の受験者平均は、昨年の60.4%から、今年は65.6%に上昇しました。今年の合格者平均の70.4%もまれに見る高さでしたから、来年は難しい題材となる可能性に要注意です